合説どっとこむ編集長コラム「就職力は面接力」

新卒採用担当の評価は40年後に

兵頭 秀一2020年04月14日16時34分

新卒採用担当が定義する優秀な人材はどこを視野に入れたものなのでしょうか。入社直後の活躍期待なのでしょうか、それとも将来の課長・部長といったステージでの活躍期待なのでしょうか。

その本質は会社経営をするようになってよく見えてきました。新卒採用における最も重要な課題は「優れた将来の社長候補を準備すること」なのです。私自身が人事部員時代には気づくことができなかったことです。

会社という生き物の寿命は無限です。したがってどんな会社でもその普遍の目標は「倒産せず永続すること」となります。会社が100年続くならば、その間の社長は多ければ20人、30人にもなります。この30人の中に「ダメ社長」がいたら会社は一巻の終わりなのです。優れた中堅幹部を多数用意することよりも優れた社長を用意することの方が優先度の高い経営課題なのです。

私が会社員時代に新卒採用責任者を最初に担当したのは株式会社いなげやです。東京近郊に約130店舗のスーパーマーケットを展開する東証一部上場企業です。同社では今年(2020年)の4月に社長の交代がありました。新社長の本杉吉員さんは私の2学年上の1986年(昭和61年)新卒入社。新卒入社から34年目。現在のご年齢は56歳です。

未来の社長を採用した昭和61年の同社の新卒採用は大成功ということになります。でも当時の新卒採用担当がそのことで評価されることはありません。ちなみに前社長の成瀬直人さんは昭和51年の新卒入社。本杉さんの10年先輩ですから、単純に社長人材が新卒で採用できているのは同社の例では10年に1度ということになるのですね。

私がそこで新卒採用の責任者を務めたのは1999年(平成11年)卒~2003年(平成15年)卒です。その時採用した人たちは今は40歳前後の中堅幹部世代です。本杉さんの次の次のタイミングになるでしょうか。社長が果たしてその中から誕生するでしょうか。つまり当時の私の仕事の本当の成果が出るのはまだ15年~20年くらい先ということになります。その時私は70歳を過ぎています。自分の仕事の成果を見届けることすらできないかもしれません。

最近は社長人材を外部からスカウトするというプロ経営者の登用が盛んです。でもこういうケースは内部で社長人材を準備できなかったわけですから人事部の敗北とも言えます。いなげやが15年後に外部から社長人材をスカウトしないことを祈ります。元採用担当として。