合説どっとこむ編集長コラム「就職力は面接力」

イマドキの大学生はどうですか

兵頭 秀一2020年04月07日12時00分

居酒屋などである程度ご年配の一般の方と互いの職業の話題になると決まって聞かれることがあります。それは「今時の大学生ってどうですか?」です。

「最近の若者はねぇ」とおじさんがぼやくのは世の常。その話題を主観で答えると自分もおじさんになってしまったな、と自己嫌悪に陥ってしまいます。なので客観的で決定的なデータを引きだしていつもここは真面目に答えています。

18歳人口と大学進学率の変化です。検索すれば様々なサイトで様々なデータは出てきますので詳細はそちらに譲ります。ざっくり言えば私が18歳だった36年前と現在の就活生にあたる3年前の18歳人口は4割ほど減少しています。一方、大学進学者は実数で2割弱の上昇をしています。この間、新設された大学は多数あれどは潰れた4年制大学などはほとんどないからです。

したがって大学進学率は当時のおよそ2倍です。昭和の時代は例えば公立中学に一クラス40人いたらその中で大学に行く人はおよそ10人。この10人は大体しっかり勉強をしている人です。ここ数年はそれが1クラス20人以上なのです。

MARCHという言葉をマスコミが盛んに使うようになったので2000年代に入ってからと言われています。大学進学率が40%を超えたあたりがこの頃です。学力という点のみに焦点を当てれば「大卒」の社会的評価は徐々に低下し、別の言葉が使われだしたということです。

上から目線のような記事になってしまいましたが、私自身は偏差値的に言うとMARCH未満、中堅大学の出身です。OBとしての活動も盛んに行いつつ現役の後輩たちとも多くの接点を持っています。なのでよくわかるのです。

その大学では私の在学当時(1980年代)はクラスメイトも部活の仲間も半分は浪人経由。苦しい受験戦争を突破して入学していました。今では中堅校に浪人経由の入学者はまれ。受験勉強という過程も経ず、何らかの推薦で入学する人がほとんどじゃないかというほど多数です。高校の成績は普通、なのに面接と作文だけで大学入学ということなどは昔は考えられなかったことです。

多額の経費を使って電車の中吊り広告で「入学生募集」などという広告を母校が出している事実もちょっとショックではあります。大学も「大学」という体裁を保つことがしんどくなってきているのだと思います。勉強が嫌い、で育ってきた子がキャンパスに大多数、という大学も多いことでしょう。

採用担当をしていたころの経験で言えば大卒の入社試験の基礎学力試験の出来の低下に衝撃を感じたのは2000年前後です。最近ではエントリーシートの添削も面接練習のフィードバックも、そもそもの日本語の修正が大きなウェイトを占めています。

就活生のみなさんにアドバイスがあるとすれば「大卒=幹部候補生」というアドバンテージはないものと思いましょう、ということです。それは大卒の人数が相対的に少数であった昭和の時代の話なのです。

では、なぜそんな昨今でも企業は盛んに大卒採用をするのか。

1.それでも優秀な人材がそこにいる確率は高い。
2.就職ナビというシステムを中心に一人当たり採用費を抑えて大量採用がしやすい。その点で高卒採用や中途採用よりかなり効率が良い。
3.今の会社の中枢にいるのは昭和の大卒のおじさまが多い。彼らは潜在的意識の中で大卒の価値を否定したくない。

そんなところかと思います。意外に大きいのは2番です。もし高校生がリクナビやマイナビを使って大学生と同じ選考の舞台に立てるようになれば、面白い現象が起こると見ています。面接で普通に大学生に勝利する高校生はたくさんいるはずです。

余談ですが、タレントの武田鉄矢さんは、著書の中で「これからの日本は大卒の価値が落ちていく」と予言されていました。それは私が大学受験勉強に奮闘していた真っただ中の昭和58年(1983年)に読んだ本でした。今も強く印象に残っています。